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オーディオ回路の設計に当たっては、カップリングコンデンサの選択に気を配らなければならない。この選択を誤ると、音質の劣化を招いてしまうのだ。従って、設計者はコンデンサの各種性質が音質にどのように作用するのかを知っておく必要がある。本稿では、筆者が「Windows Vista」への適合認定を受けるために行った、パソコンのオーディオ回路設計を例にとり、コンデンサの正しい選び方を説明する。 Kymberly Schmidt 米Maxim Integrated Products社 |
米Microsoft社は、「Windows XP」の仕様に適合するパソコンに対し、「Designed for Microsoft Windows XP」と書かれたロゴマークの掲示を許可していた。販売促進を目的としたこの適合認定ロゴプログラムは、「Windows Vista」にも同様に引き継がれた*1)。
Windows Vistaのロゴプログラムには、「Basic」と「Premium」の2種類がある。これらVista用のロゴプログラムと従来のロゴプログラムの相違点の1つとして、Vista用では、オーディオ特性が測定方法も含めて厳密に定義されたことが挙げられる。特に、Premiumのロゴを取得するために要求されるオーディオ特性は、より高いレベルで規定されている。このことにより、ユーザーは、高い音質と高い忠実性を実現するオーディオ機能を手にすることが可能になった。一方、パソコンメーカーは、Vistaロゴの使用認定を得るためには、要求されるオーディオ性能を厳密に満足しなければならない*2)。
Vistaのロゴプログラムで要求されているオーディオ特性項目は、THD+N(total harmonic distortion plus noise:全高調波歪率)、ダイナミックレンジ、クロストークなどである。このような要求項目に対し、設計者の中には「高い性能のオーディオコーデックやオーディオアンプを選択すれば済むことだ」と考える人もいるかもしれない。しかし、実際には信号ラインに挿入されるいくつかの受動部品が最終出力の歪(ひずみ)に大きな影響を与えることを理解しておく必要がある。
受動部品が影響する原因は、それによって、ゲイン/バイアス条件/電源ノイズ除去/DC遮断の程度が決定されることに起因している。例えば、携帯型オーディオ機器の設計では、部品を配置するスペース/高さの制限と低コスト化の要求が厳しいため、受動部品は小型で厚みがなく、低価格であるものにせざるを得ない。しかし、そうした部品は、非線形な特性を有しているものが多い。このことを理解していないと、Vistaのロゴプログラムに適合するためにさまざまな努力をしても、良い結果は得られないだろう。
本稿では、受動部品の中でも、特にコンデンサに注目する。コンデンサの振る舞いは、電圧係数(電圧変化に対する特性変化の係数)、温度係数(温度変化に対する特性変化の係数)、ピエゾ効果(piezoelectric effect)、ESR(equivalent series resistance:等価直列抵抗)、ESL(equivalent series inductance:等価直列インダクタンス)、リーク電流、誘電損失、特性バラツキなどの影響により理想的なものではない。これらのうち、オーディオ品質の高い信号回路を設計する上で最も重要なのは、電圧係数である。そして、電圧係数は主に逆ピエゾ効果によって決定される。以下では、この逆ピエゾ効果による影響について説明する。
逆ピエゾ効果について説明するために、まずピエゾ効果とは何かということを明らかにしておく。ピエゾ効果とは、結晶に外力(圧力)を加えることにより、電圧が発生する現象のことである。これは、外力によって結晶内部でイオンが変位することで、その結晶に電荷が生じることに起因して発生する。外力がない状態では結晶構造は対称であり、電気双極子モーメントの総和は0になるが、外力を加えると電荷分布が非対称になり、この分極により電圧が発生するのである。
本稿で焦点を当てる逆ピエゾ効果とは、いわばピエゾ効果の原因と結果を逆にしたものだ。つまり、電界の印加により外形寸法が変化する現象のことである。
逆ピエゾ効果は、電界からの影響を大きく受ける高誘電体の物質の場合に、より大きく作用する。つまり、class2誘電体*3)で構成され誘電率kの大きいコンデンサは、逆ピエゾ効果が大きい。言い換えれば、その種のコンデンサの外形寸法は電気信号によって大きく変化するということだ。信号電圧が大きくなるとコンデンサの変形も大きくなり、定格電圧が変化することもあり得る。
このようなコンデンサをオーディオアンプの入力に使用し、同アンプとオーディオコーデックとの間のDC成分をカットしようとすると(図1)、コンデンサ容量が変化する。それに伴い、アンプの伝達関数T(jω)が信号レベルに応じて変化する非線形動作を示すことになる。
ここで、伝達関数T(jω)=k/(1-j(ω0 /ω))において、k=RF /RIN 、ω0=1/(RIN・CIN)となる。回路の振幅応答は|T(jω)|=|k|/
であり、CINの値に依存して変化する。コンデンサのインピーダンス(1/jωCIN )の非線形変化は、回路のゲインに対するコンデンサインピーダンスの影響が大きい低周波数域において最も顕著になる。この現象がオーディオ出力に歪をもたらすのだ。
この逆ピエゾ効果はオーディオ帯域の低域における歪の最も重大な原因になる(図2)。この効果の影響は、ゲインが-3dBになる周波数(以下、-3dB周波数)において最大になる。つまり、入力カップリングコンデンサとオーディオアンプのインピーダンス値が等しくなる周波数f3dB=1/(2πRIN・CIN)で最大となる。オーディオアンプの入力抵抗と入力カップリングコンデンサが一般的な値の場合、-3dB周波数は約100Hz以下である。
以上のように、class2コンデンサにおける電圧係数は、主に逆ピエゾ効果により決定されることが理解できたであろう。
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