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ドイツSeeReal Technologies社は2007年10月、3Dホログラフィ技術を使った20型3Dディスプレイを試作し、日本でデモを行った(図1)。試作機では使用した液晶パネルの応答速度が50msと遅く単色表示となったが、同社のCEO(最高経営責任者)を務めるMark Thorsen氏は「これから、液晶パネルメーカーなどと協力して応答速度の速いパネルの開発を進め、早ければ2009年末には3D液晶テレビの商品化に結び付けたい」と語った。
ホログラフィ技術自体は60年前から存在する。しかし、リアルタイムのホログラフィは作れなかった。その理由は大きく2つある。まず、リアルタイムホログラフィを実現しようとすると、必要な視野角を得るために画素ピッチが0.6μmの高解像度のディスプレイが必要となる。もう1つは、これらすべての画素についてホログラムの干渉縞を計算するのにはスーパーコンピュータ並みの演算能力が必要となることだ。一例だが、マサチューセッツ工科大学が開発した10cm角の液晶パネル向けのホログラムでも、非リアルタイムでの計算に、40ペタFLOPS(FLOPSは1秒間に浮動小数点演算を処理できる回数)の演算能力を持つコンピュータで数時間を要したという。
同社はこれらの課題を解決するため、主に2つの技術を開発した。1つはビューウィンドウの作成とその追跡技術である。ビューウィンドウは人間の目に見える(届く)部分(角度)の映像データのみを処理して表示する。それ以外の目に入らない無駄な映像データは処理しない。また、ディスプレイを見ている人の目の位置を、ディスプレイ側に取り付けられたカメラで検出してその動きを追跡する。これによって、人が動いてディスプレイを見る角度が変わった場合でも、ビューウィンドウの位置を移動させ、必要な映像データのみを抽出して表示することができる。この結果、ホログラフィを使ったディスプレイで要求される60度の視野角に必ずしも対応する必要がなく、「画素ピッチが60μm程度のディスプレイで得られる視野角でも十分だ」(Thorsen氏)という。試作品では画素ピッチが207μmと大きいため、ビューウィンドウのサイズは6mmだが、画素ピッチが20μm~60μmのディスプレイを使えば20mmを超えるビューウィンドウを得ることができる。
もう1つは、ビューウィンドウの画像をさらに細分割して処理するサブホログラム技術である。これによって一部分だけホログラムの干渉縞を計算すればよく、すべてのホログラムを計算していた場合に比べて、プロセッサの演算処理能力は1万分の1で済む。このサブホログラムを重ね合わせて立体映像を構成する(図2)。
ホログラムを計算するチップも自社で設計した。このASICの詳細は明らかにしなかったが、「3.5テラFLOPSの処理能力を持ち、グラフィックスボードにも実装できる」(Thorsen氏)という。このASICは、今回開発した技術を使い、2DのHD(高品位)映像でもリアルタイムに3D化できる処理性能を持つ。
今後、これらの技術を使って3Dの液晶テレビを商品化するには、オン/オフの応答速度が3msと速いディスプレイが必要となる。Thorsen氏によると、水と油が反発する特性を利用した「electrowetting」技術を使ったディスプレイであれば十分に対応できるという。しかも、このディスプレイは「既存の液晶ディスプレイ工場の設備を活用して量産できる」(Thorsen氏)ので、このディスプレイのための新しい工場を建設する必要はない。
(馬本 隆綱)
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