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Bonnie Baker |
いわゆるランダムノイズが、実際には予測可能な変動パターンを持つケースが多いことをご存じだろうか。この変動パターンは多くの現象に現れる。遺伝子プール(gene pool)やギャンブルといったものから、運転の癖などにも見られるものである。
アナログ値に含まれるランダムノイズを表現する方法は2つ考えられる。1つは、例えばA-Dコンバータのデジタル出力を多数サンプリングし、バラツキの標準偏差を求める方法である。この標準偏差が実効値(RMS値)として広く用いられている。
もう1つ、標準偏差と波高率(crest factor)を使用する方法がある。これによりアナログ信号に含まれるノイズのピークツーピーク値(以下、P-P値)が規定できる。A-DコンバータをはじめとするアナログICのノイズの規格としてRMS値やP-P値を使用する場合、その値は統計的手法により求められるのである。
ノイズのパワーはRMS値によって表すことができる。通常、ノイズの規格にはRMS値が用いられることが多い。一方で、ノイズの規格としてS/N比(信号対雑音比)が用いられるケースもある。通常、S/N比はdB単位で規定される。
ノイズを1つのRMS値で規定する場合、上述したように、ノイズのバラツキ範囲を正負の標準偏差により規定することになる。A-DコンバータのノイズをRMS値で規定する場合、その定義は明確なものであるが、そのRMS値から瞬時値を推測するには確率論に頼らなければならない。A-Dコンバータからの出力がDC値に対応する値であるとしても、その瞬時値はヒストグラムとして表現できることになる(図1)。例えば1000点程度のデータをサンプリングして蓄積すると、そのヒストグラムはガウス分布や釣鐘状分布を示す。この分布において、どのくらいの値のノイズがどのくらいの頻度で発生するかは、標準偏差値(RMS値)によって概括できる。ノイズ成分を含むアナログICの出力が正負の標準偏差の範囲内に入る確率は約68%となる。
A-Dコンバータの出力デジタルデータをディスプレイの駆動に使用するケースがある。この場合、ノイズのP-P値が重要な意味を持つ。ノイズの存在は表示の揺らぎにつながり、揺らぎが大きくなると、ユーザーが不快になってしまうこともある。図1のヒストグラムからわかるように、RMS値によるノイズの表現では、相当量のデータがRMS値の範囲外に存在し得ることになる。それに対し、RMS値に波高率を乗じた値、すなわちピークツーピーク値を用いると、ノイズのほとんどはその範囲内に収まることになる。
ディスプレイ表示の揺らぎを抑えるためにデータが満たすべき許容範囲は、比較的簡単に計算できる。まず、波高率を選定し、その値とRMS値を乗算する。工業分野では、この波高率の標準値として3.3が用いられることが多い(表1)。この値は3桁(three digit)表示のディスプレイに適したレベルのものだと言える。それに対し、5桁表示のディスプレイを安定に表示するには、波高率として4.4を用いて評価する必要がある。この場合、最小桁の表示がノイズによって揺らぐ時間確率は0.001%になるというのが表1の意味するところである。
一般に、アナログICの入力換算ノイズや出力換算ノイズを規定する場合には、RMS値またはP-P値のいずれかを用いる。データシート上では、これらの値が「Vrms」または「Vpp」を単位として記されている。A-Dコンバータ出力のノイズパワーを知りたいなら、RMS値を参考にすることになる。一方、ディスプレイの表示揺らぎの程度を規定するような場合にはP-P値を使用すればよい。
<筆者紹介>
Bonnie Baker
Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com
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