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自動車向けの電子部品や電子制御機器などは、電力管理システムによって、バッテリを余計に消耗したり、ガソリン燃料を浪費したりすることを防ぐように設計されている。今や自動車の多くには車内ネットワークが導入され、電子サブシステムのスリープ時の電力要件もより厳しくなってきている。設計者には、車載アクセサリやサブシステムの消費電力をできるだけ低減することが求められる。さらに、次世代の電気自動車やプラグイン電気自動車などでは、こうした電子サブシステムの低消費電力化がますます重要な課題となる。 Margery Conner |
ガソリン自動車には、運転者や搭乗者がある地点から別の地点へと快適に移動することを可能にし、なおかつ、使用するガソリンが少量で、有害物質を多く排出しないことが求められる。しかし、現在では自動車を購入する人々が求める「快適さ」の定義は、以前よりも範囲が拡大してきている。ドライバーの多くは、衛星ナビゲーションシステム、セキュリティシステム、温度調節機能、インターネットへのインターフェースなどはもちろんのこと、冷蔵庫といったものまで自分の車に装備されることを望んでいる。
このように、自動車が備える機能への要求が高まってきたことにより、エンジンが停止していて車載電子部品がスリープ状態にあるときの自動車のバッテリへの負荷が増大してきている。自動車向けの電子アクセサリの設計者は、自動車の機能やアクセサリの消費電力要件と、スリープ時におけるバッテリの電力の限界とのバランスを考える必要がある。加えて、昨今のガソリン価格の高騰などにより、消費者は自動車の燃費を以前にも増して重要視するようになってきている。そのため、自動車メーカーは燃料供給や空調などのサブシステムとして、複雑ではあるが効率の良い電子制御システムを採用するようになってきた。
従来は、ガソリンは今よりも安価で、自動車に搭載される電子部品は単純なものが多かったので、車載向け電子部品の消費電力を低減しようという発想はあまりなかった。ところが、現在では多くの自動車にCAN(Controller Area Network)などバス型の車内ネットワークが導入され、電子サブシステムにおけるスリープ時の電力要件は以前にも増して厳しくなってきている。そのため、設計者には車載アクセサリやサブシステムの消費電力をできるだけ低減することが求められている。常時電源が入っている電子部品においてスリープ時の電力を低減することで、バッテリがすぐに使い果たされてしまうといったことが防げる。例えば、2週間の海外旅行を終えて空港に戻ってきた旅行者が、自分の車に乗ろうとしたときに、バッテリが上がっていて車が動かなかったといったこともなくなるのである。
駐車しているときに、完全に停止するシステムの1つがエアバッグである。自動車が駐車されている状態であれば、エアバッグを起こしておく必要はない。一方、キーレスエントリや警報システムなど、駐車中であっても機能させておく必要があるサブシステムは、スリープ状態になっている。完全に停止させるのではなく、動作し続けるために必要最小限の微電流が流れている。このとき、必要な電力はバッテリから直接供給される。自動車メーカーは、CANなどのネットワークによって電力の分配を制御するようにしている。常にオン状態を保つ必要があるシステムには電力を供給し続け、それ以外のサブシステムなどはネットワークからの起動信号を待ちながらスリープ状態を保つように設定されているのである。ただし、自動車メーカーはアクセサリやサブシステムのスリープ時の電力要件を公表していない。
バッテリ自体の品質向上に加えて、車内ネットワークによる電力制御やスリープ状態における厳しい電力要件などによって、最近では長期間駐車していた自動車のバッテリが上がってしまうといった事態は発生しなくなった。ただし、アフターマーケットでアドオンされる電子部品などは、バッテリの電力を必要以上に消耗してしまう可能性がある。通常、それらの電子部品は、シガーライターなどの電源コネクタから電力を得るため、車内ネットワークと直接やり取りすることはできない。
米Freescale Semiconductor社のアナログ製品部門担当システム/アプリケーションマネジャを務めるKevin Anderson氏は、「自動車メーカーが提案しているネットワーク手法は、各社がそれぞれ厳重に管理しており、アフターマーケットなどの業者には詳細が明らかにされていない。そのため、データの一貫性を図るためのオープンなシステムになっていないのが現状だ」と指摘する。
また、自動車のエンジンが稼働していて、十分に電力を確保できる状態であったとしても、電子アクセサリやサブシステムの低消費電力化は必要である。自動車のある部分が局所的に高熱になることを防ぎ、車の燃費をさらに向上させるためには消費電力を節減しなければならないからだ(別掲記事『自動車におけるエネルギ損失』を参照)。半導体メーカーなどは自動車市場向けに、比較的単純な電子部品であっても低消費電力化を図るための機能、さらには“知能”を搭載した製品を市場投入するようになってきている。
かつては、一般的な車載用のスイッチとしてはリレーが用いられていたが、今ではオン抵抗が小さく信頼性の高い半導体リレー(SSR:Solid State Relay)に置き換わりつつある。リレーの抵抗値は25mΩ~100mΩであるのに対し、SSRの抵抗値はわずか2mΩほどである。この数字は、標準規格にのっとった銅線の数フィート分(1フィートは30.48cm)の抵抗値とほぼ同じである。電流が700Aにも達する可能性があるエンジンスタータなどのサブシステムでは、抵抗値が小さいことが重要である。
また、継続的にオンの状態のままであっても、電流値が変動する回路がある。例えば、白熱灯のヘッドライトが最初に点灯するとき、電球の温度は低いため、内部に流入する電流は20ms~50msの間で100A~150Aにもなる。ところが、電流が流れると電球の温度が上昇して抵抗値が増加するため、電球の大きさにもよるが電流値は5A~40Aまで低下する。
Freescale社のSSR製品ファミリ「eXtreme Switch」などは、最初に流れる大電流に対応しつつ、セットポイントを変える機能も備えている。電球の温度が上昇して抵抗値が変化すると、セットポイントは低い電流に合わせた新しい閾(しきい)値に変更される。また、さらに電流が急に増加して、回路が短絡したと判断すると、チップはヒューズとして動作してオフになり、スイッチと負荷の両方を保護する。こうしたインテリジェントなスイッチは、電力効率が高いだけでなく、信頼性も高いので、周辺材料のコストを抑えることが可能になる。
自動車の燃費を考えるとき、車載向けの電子部品はどれほどの影響を及ぼすのだろうか。実は、米国エネルギ省のウェブサイトのデータを見ると、電子部品の燃料消費はそれほど大きいものではない*1)。
自動車が走行時に使用する燃料エネルギは全体の消費量の13%にも満たない。残りのエネルギは、エンジンや動力伝達系路の効率の悪さ、アイドリング、空調アクセサリなどによって失われる。表Aはその内訳を示したものである。この表の数値を合計すると、自動車を走行させるために残っているエネルギが12.6%であることが確認できる。
空気力学や機械的な改良によっても燃費はいくらか向上するが、電子制御によっても燃費を向上させる余地はある。例えば、赤信号でエンジンが停止し、アクセルを踏めば自動的に再起動するような高度なスタータを利用できれば、17%を占めているアイドリングによる損失を低減することが可能になる。
1 増加するバッテリ負荷
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